Magazine Series - izumi out

vol.2 48Hour / May,2016

Saltwater Magazine series – izumi out

“izumi out”とは、プロフェッショナルアングラーでありコアマンの代表である泉裕文の釣りに対する想いを表現するメディア。彼が産みだす数々の釣れるルアーたちは、どうのような考えを元にカタチになっているのか。そのプロダクトづくりをする上でインスピレーションを得ている釣りに関連するモノやコトについて語る雑誌連載。

 

イズミアウト 第2回「48時間」

現場ではアングラーという顔だが、釣り場を離れれば経営者という側面を持つ泉。釣りをビジネスにして充実した日々を過ごしている泉の2日間、とある初春の48時間に密着してみた。

非常に反響の大きかった第1回目の当連載。第2回目は泉のプライベートにさらに迫るべく、48時間密着リポートを実施。そして、〝現在の泉″に至るまでのコアマンのルーツ、仕事、ライフスタイルに対する考え方。さらに、これからの〝時間″のことを率直に話してもらった。

 

仕事のこと。常に一石二鳥をねらっている。

人間に敵はいない。敵は魚。釣れてこそ遊び。

釣りは個人種目であり、ひとりで遊ぶスポーツ……だろうか。こんなこと考えたことはないかもしれない。だが、一歩引いてよく考えてみてほしい。そのポイントに立っているのは、どういう経緯からだろうか。「釣りは、ひとりではできないですからね」と泉は言う。仲間やネットからの釣果情報によって立っているのか。あるいは、釣りの腕が上達したことでそのポイントへ立っているのか。どちらにせよ、〝敵〟は人間ではなく〝魚〟であリ、人間関係によって積み上げられてきたものだと泉は実感している。

「人間に敵はいない。敵は魚ですから。釣りは釣れてこそ遊びですからね。自分の釣りを確かめるためには、人の存在がないと無理でしょ。自分よりも上手いヤツがいてはじめて気付く。だから、上手い人と出会って向上したい。負けたときの喜び。まだ、伸びシロがあるってことですよ。上手いヤツ、ナンボでもおるからね(笑)」というわけだ。向上心があるからこそ、新しい発見がありメソッドが生まれルアーにアウトプットされていく。

そのひとつがご存知の〝岸壁ジギング〟だった。オフショアジギングに熱狂した若き泉が護岸でシーバスを狙うために構築したメソッド。当時、泉はまだサラリーマンだったが、自らがプロデュースした製品が動かした市場の数字に驚いた。それがバネとなり引き金となり、コアマン立ち上げのきっかけとなった。「実は、最初は業種はなんでもいいから30代で起業したかった。人が働いてる時間に釣りがしたかったからね(笑)。でも、釣りを続けてて……岸壁ジギングでわかった。自分の釣りで業界が大きく動くことをね。これがデカかった」35歳でコアマンを起業。

〝人が働いているときに遊ぶ〟ことを目的とするために泉は〝人が寝ているときに仕事をする〟スタイルにシフト。もちろん、これにはテストという名の釣りも含まれる。泉にとって釣りは遊びであり仕事でもある。睡眠時間を削っての仕事であり釣り。だが、近年は遅くても午前0時には寝るようにするなど睡眠時間も大切にしている。

さらに、泉は大好きだったお酒をやめた。「この決断はよかった。これによって多くの時間ができた。人って変われるんですよ(笑)」だれにも平等にある24時間。有効活用するかどうか。それは移動時にも。「パンクしたらイヤやからゲルを注入してノーパンクにチューニングしてます。ちょっと乗り心地が硬いけど(笑)」コアマンオフィスの1階に同じ折りたたみ自転車が2台、目に付いた。2つあるオフィスと家との3点間を自転車で速やかに移動し時間を短縮するため。その移動の際や何処かへ出かけるときにも泉は一石二鳥、三鳥を常に狙っているという。そう、決してひとつの用事だけでは動かないという徹底ぶりだ。

 

DAY1
05:30 コアマン社で起床
起床は大抵5時。コアマンオフィスに明かりが灯る。夜は午前0時には仕事を終わらせ寝るようにしている。健康あってこその仕事であり釣りだ。

06:00 会社横を流れる住吉川の遊歩道にてランニングスタート
フルマラソン参加やトレイルランニングなど走ることが好きな泉は時間がある限り、出張先でも時間をつくり汗を流す。走る前にはしっかり柔軟。最近は水泳も始め、ジム通いも習慣としている。当日は気温も低く冷たい雨が降る朝だったが、泉は気にせず予定通りにランニング。泳ぎを始めたからといってトライアスロン参加などは考えてはいない。ちなみに、泉は朝からテンションが高い!?

06:55 ランニングから帰社
コアマンオフィス横を流れる住吉川遊歩道を海側から山側へいきなり登り坂からスタート。この日は5km強の軽いランニング。終了後は速やかに帰社。

07:05 シャワーのため一時帰宅
ランニング後は8インチタイヤのフォールディングバイクで一時帰宅してシャワーを浴びてリフレッシュ。常に最低1台はオフィスに置いておく。

08:30 再出社
シャワー後、音楽を聴きながら自転車で速やかに再出社。「通勤時間はムダ!」と自宅とオフィスの距離を気にして近くに住んでいる。

09:15 モーニングコーヒーを飲みながらルアーいじり
アイドリングのようにルアーを眺めいじり始める。「これでインスピレーションが湧いてくる」

09:28 スタッフミーティング
出社しているときは毎朝するというスタッフとのミーティング……といっても釣り情報交換。だが、これこそがコアマンの重要な仕事のひとつ。ベイトフィッシュの動向など新鮮な情報が聞けた。5分から10分といつも簡潔に済ませる。だらだらしない。

09:33 デスクワーク開始
HPの素材、メンテナンスから自らの情報発信。開発業務、資材の購入から発注、伝票作り、出荷、経理などなど。実務作業は多岐にわたり自ら行う。これによりすべてが把握でき細かいケアもできるよう心がけている。徹底したマイクロマネージメントが信条。

11:40 ランチミーティング
外注デザイナーであり、盟友の広川嘉孝さん、通称イカ係長と穏やかなランチミーティング。結構、まじめな話でランチ終了。泉はしょうが焼き定食、ご飯半分というこだわりの注文。食にも健康にもうるさい泉。炭水化物は多く摂取しない。

13:10 帰社して新製品IP-13アイアンプレートのスイムテストへ向かう
某場所にて全長7mの水槽でスイムテスト。水槽ではルアーの立ち上がりやアクションなどを確認。そして、現場では飛距離やレンジなどを確認。この作業を納得いくまで行い製品化されているわけだ。

16:12 検品作業のためコアマンの第2オフィスへ向かう
スタッフが行うコアマン第2社屋住吉オフィスでの検品作業など自らもチェック。このときは『VJ-16バイブレーションジグヘッド』がズラリ。ひとつひとつ、手作業でていねいにヘッドにワームが取り付けられていた。

18:02 検品後は本社へ戻りデスクワーク
3階建ての住吉オフィスにて検品作業は続く。イベント用の什器やプロダクトが整然と並べられてある。どこに何があるか、もちろん泉はすべて把握している。

19:50 夕食
肉好きの泉。この日も炭火焼きの焼肉店へ。1週間連続は珍しくないとか。ごはんは一緒に食べないし、アルコールももちろん飲まない。肉と野菜のみだ。

20:04 オフィスへ戻りデスクワーク
夕食後は速やかにオフィスへ戻り残りの業務を片付ける。本日の情報発信、収集のためデスクへ向かった。

00:00 仕事終了
オフィスにて睡眠。週のうち2日はオフィスでこのように寝るようだ。NANGAの寝袋に包まれて爆睡。電気はつけて寝る。

 

人生のこと 残りの人生の時間について

35歳でコアマンを立ち上げ走り続けて約10年が経った。ここからはマイペースで歩き出す、そんな雰囲気が伝わってきた今回の取材。そのペースが速いかどうか……

人生をかけてやってる釣りのエンドを考えたら「40歳を超えてから強烈に〝死〟を意識してる。エンドがどこかをね。逆算したら時間がない!」。人間はいつか死ぬ。こう考える人も少ないくないだろう。まして、やりたいことがある人は余計に強く思うだろう。泉が設定するエンドは〝死〟もそうだが、釣りができるエンドでもある。

「生きるのは65歳までしか想定していない。いまのパフォーマンスのままで釣りができる限界がそのくらいちゃいます? 33歳のとき、65歳はイメージできなかったけどいまはできる。人生をかけてやってる釣りのエンドが65歳かな。それ以降はおまけ(笑)。それまでは必死に生きる」だから時間が欲しい、時間を効率よく使いたいと考える。泉は長生きしたいとは思っていないようだが、いまのパフォーマンスをできるだけ維持するために体にも気を使いはじめた。

「だから、テレビを観てるヒマもない。好きなことをもっと特化させたい。その思いは年々強くなってる。だから、もっと釣りをしないとダメですよね。この仕事はもっと釣りをせんとダメ。魚を釣る能力がないとね。僕ら漁師と一緒ですから。春、夏、落ちアユシーズン……あと何回迎えられるんかな……」と考えれば考えるほど命の儚さについて思うかもしれないが、逆に、いまあるこの時間、この出会いを大切にするようになる。泉は昔から実に楽しそうに釣りをする。笑顔で「幸せやね」なんて言いながらキャストしリトリーブを繰り返す。もちろん撮影時に。私はこれまで延べ2000人のアングラーを撮影してきたが、そんなアングラーをほかに知らない。

そんな泉のスタイルは、年々、装備もシンプルになっている。泉自身、考えも装備もシンプルに軽やかに、でも深くスタイルをピンピンに尖らせようとしている。時間の使い方、価値観も習慣によりスタイルと化している。「目標はお金じゃないんですよね。人の夢を叶えられるかどうか」釣れるプロダクトを提供することで、お客さんとしてのアングラーたちは釣ることで幸せになれる。釣りだから、釣ることで楽しさを味わえる。釣れたら、だれもが幸せになれる。これが原点にある。だから、いいものが作れるし作ることに没頭できる。

「お客さんを見てるんじゃなくて、魚を見て僕らは作ってる。だから、周りの仲間たちにも感謝してますよ」泉の周りには多くのエキスパートたちが集まっている。興味深いのはプロダクト製作時のテスト。皆の意見を集約するという方法は取らない。「皆の意見を集めると平均的なものしかできない。皆にプロトは配って使ってもらってますけど意見は参考にするだけ。全部、僕が決めてやってます。じゃないと尖ったものは作れませんからね」というわけ。〝まだまだシーバスは釣れるようになる〟〝可能性はすごくある〟、と泉は断言する。ワクワクしながら時間を過ごしているのがこちらにも伝わってくるほどだ。

 

DAY2
05:00 コアマンオフィスにて起床

06:25 テスターである北野雅朗さんと合流
5時オフィスで起床。軽くデスクワーク後、釣り準備。テスターでもある北野さんがやってきた。ここでも軽く情報交換。

07:00 IP-13アイアンプレート実釣テストのためコアマン社前から神戸渡船にて神戸沖堤防へ
コアマンオフィスから渡船乗り場までは100mもない。必要最小限のライトな装備でデイシーバスを楽しむ予定。今回は『IP-13アイアンプレート』の実釣テストが目的。常に何か目的をもって釣りをしている。
コアマン渡船と呼ぶ神戸渡船にて沖堤防へ。コアマンオフィス前から出船という贅沢便。もちろん、チャーター。船内では船長と雑談そして情報交換。

07:23 実釣テスト開始
気持ちのいい朝まずめ。ここでも「幸せやね(笑)」発言。近年、日に何度も聞くようになった。生きてることを実感している証拠だ。

07:46 タコ釣りのおじさんと軽く会話
外向きから内向きへ狙いをシフト。この日、出会った釣り人はタコ釣りのおじさんひとりだけ。軽く会話をして狙いを外側から内向きへと替えることにした。

08:03 IP-13アイアンプレートのピンクヘッドにて60㎝クラスをヒットさせる
「最高の釣り日和やね」。この時点では快晴無風。内向きに移動して数投目で『IP-13アイアンプレート』にヒット。実釣テスト成功。納得の仕上がりと狙い通りの釣果に笑顔。ボーダレス×レバーブレーキで暴れさせないファイトを実践。魚は難なくネットイン。デイゲーム、コアマンルアーの力を見た。

08:16 iPhoneにて撮影

08:42 北野さんがIP-13アイアンプレートのコンスタンギーコにて同サイズをヒットさせる
北野さんも内向き狙いでナイスコンディションの同サイズを『IP-13アイアンプレート』にて釣りあげた。自分以上に喜んだ泉だった。

08:57 ポイント移動

09:35 コーヒーブレイクを兼ねた情報交換

09:47 釣り再開

11:00 迎えの渡船がくる

11:11 船長との会話後、仮眠をとる
5分でも10分でも仮眠を取るのも泉スタイル。「僕、どこでも寝れるんです(笑)。ちょっと寝ただけで頭、スッキリするでしょ。こういう時間を利用して休んでます」。船長との会話が終わったらサッと寝てしまった。帰港までしばし睡眠タイム。船の揺れがまたいい。

11:39 帰社後、後片付けをしてデスクワーク
この日はランチなし。3食は食べない。基本1食ちょっと。実釣後は片付けをしてからデスクワーク。

14:20 カフェで読書タイム
昔はこんなに本を読まなかったという泉。最近はお気に入りの空間で読書の時間もつくっている。

15:28 タックルベリー神戸御影店へ
中古ルアーには夢がある。新旧ルアー合わせ年間300~400個購入するという。ジャンルは問わない。「〝ルアー博物館して″ってよく言われます(笑)」

16:27 帰社。コアマン前の運河に近所の中学生がいたため少し会話
近年、中高生アングラーは増えていることを実感している泉。たまたま、近所の中学生に出会いちょっと会話した。

16:41 デスクワーク
この時はDUOとのコラボ、マニックフィッシュ88の2016モデルのカラーサンプルチェックしていた。

17:40 ナイトゲームの準備をする

18:04 芦屋エリアにてナイトゲーム開始
昔ほどナイトには行かないが、情報があれば普通にいまでも出かけている。この日は芦屋エリアで2時間ほど竿を振った。

20:30 夕食
ナイトゲーム終了して夕食のため『韓国食堂』へ向かう。この日も肉。でも豚。韓国並みの活気あふれる韓国料理に舌鼓。もちろん、野菜もたっぷり摂る。

22:00 帰社。釣り具部屋にて後片付け
夕食後は釣り具の後片付け。きっちりと整理された釣り部屋は大人のおもちゃ部屋。オフィスもそうだが……。

23:02 自転車で帰宅
この日はオフィスではなく自宅で寝るため自転車で帰宅。

以上で取材の2日間が終了。なんとも充実した2日間だった。

 

雑誌 ソルトウォーター(株式会社地球丸)2016年5月号に掲載

text & photo: Kenji Matsumoto
edit: Yashuhito Nakamura & Teru Wakabayashi

株式会社 地球丸 http://www.chikyumaru.co.jp/
株式会社 リバーウォーク http://river-walk.co.jp/

(C)CHIKYU-MARU,RIVER-WALK,Kenji Matsumoto,Makoto katsuzawa