Magazine Series - izumi out

vol.1 Spining Reel / Feb,2016

Saltwater Magazine series – izumi out

“izumi out”とは、プロフェッショナルアングラーでありコアマンの代表である泉裕文の釣りに対する想いを表現するメディア。彼が産みだす数々の釣れるルアーたちは、どうのような考えを元にカタチになっているのか。そのプロダクトづくりをする上でインスピレーションを得ている釣りに関連するモノやコトについて語る雑誌連載。

 

イズミアウト 第1回「スピニングリール」

泉にとって、岸壁ジギング以外の多くのステージで活躍するスピニングリール。メソッドのみならず、タックル自体も提案してスタイルを追求してきた泉の思いとは? そしてこれから、どこへ向かっていくのだろうか?

 

釣れないリールから釣れるリールへ

「親父が釣りをやってたから、家にリールも転がってましたね……いや、このリールは友達の家で拾ったんやったかな(笑)」小学生時代の泉少年が最初に手にしたリールからすべて紹介してもらおうと大量にリールを手にこんな会話からスタートした。泉のタックルに関する〝変化〟は、近年、ルアーはもちろん、ロッドからリールまで、デイシーバスという自らのスタイルを提案しながらタックルへ見事にアウトプットしている。それはどんな流れなのか。

「『シマノZ1』でタチウオ釣りの延長ではじめたシーバス釣り。初めて神戸港でこのリールを使ってシーバスを釣った。セイゴやけどね。当時、デイでシーバスは釣れんかった……っていうか、ギア比3.1、ひと巻き50㎝とかのスーパーローギア……こんなギア比でルアーが動くわけない!釣れるわけない!そう、ギア比を気にする時代じゃなかったんですよね」

 

そして、19、20歳になった泉青年はアブを片手に本格的にシーバスへとのめり込む。「カーディナルを購入するまでは、6フィートのベイトロッドでヘドンのソナーやラパラでやってた。カーディナルを所有して気持ちも高揚しましたね。スプール径も大きく、ギア比も5.1でルアーもちゃんと動いた。替えスプールも付いてたんでそれを予備で持っていくスタイルがこの時に身についた」

リールの進化はギア比以上に、ライントラブルとの戦いが大きかった。ナイロンからPEへシフトした『トーナメント Z3000iT』時代。ハイエンド機を手にした泉の意識も変わりはじめる。「ハイエンドを使って、もう戻れなくなった(笑)。『トーナメントS』からライントラブルが大きく減り、さらに『07ステラ』に搭載されたAR-Cスプールでほぼなくなった。大革命でしたね」リールの進化で釣りが快適になり釣果に反映された。それに伴い泉のライトライン化が歩みを加速。PE1号から0.8号へ。シーバスのスタンダードは0.8号になったが、泉の求める〝快適〟な釣りには、まだまだ達してはいなかった。

 

PEラインの存在があってこその小型化

小型、軽量化、取り回しのよさ、高感度などなど……近年の泉のリールに絡んだ記事に目立つワードだが、〝求めていたもの〟はここに羅列したワードではなかったという事実がある。つまり〝小さくしたかった〟〝軽くしたかった〟ではなく、結果的に〝小さくなった〟〝軽くなった〟ということだ。ひとつ言えることは〝快適さ〟を常に求めていたということ。まず、(昔は)ライントラブルというストレスが常につきまとった。

「ナイロンラインでずっときて、15年くらい前にPEラインになったわけですけど、そのとき(PEライン使い始め)からずっとライントラブルとの戦いだった」というわけだ。長い期間、PEラインのトラブル、つまり、リールの機構問題によるトラブルが続いた。「でも、シマノのAR-Cスプールの登場により、ライントラブルは解消された。劇的にトラブルが減った。これまでは、PEラインが使えるかどうかが勝負だった。でも、それからは細いラインも積極的に使えるようになった。そこで、ラインが細いからいままでの(スプールの)ラインキャパシティーがいらなくなる。だから、スプールを小さくできるようになったから、リールを小型化することができた。ベースにあるのはPEの存在なんですよ。まだPEのトラブルが続いてたら、きっとリールの小型化はなかったでしょうね」そして、さらにレバーブレーキとの出会いが泉のスタイルに大きく影響を与える。

「2009年。レバーとの出会いで、さらにラインを細くすることができた。ドラグよりも早くラインを出せる特別な動作。これでかなりアドバンテージを得ましたね」
 小型化してもレバーブレーキ搭載機種を愛用する泉、なくてはならない存在を手にした。「必要以上にラインを細くしなくていい釣りもあるんですけど、基本的に僕らみたいに小さいルアーをレンジへ入れるような、メバル釣りの延長みたいな釣りでは、どれだけラインを(レンジへ)入れていけるか、という釣りなんでね。それにはラインを細くする必要があった。そして、不意にきた大型の突進もレバーだと止めることができる。PE0.4号とか0.6号で80㎝アップクラスを根周りでかけると、結構、繊細なファイトしますからね。だいぶ竿も柔らかくなってレバーの出番が減ってはいますが、どうしても必要なときがあるんで絶対に手放せないですね」いいモノを知ってしまうと戻れない。上を求める人間の性。それを楽しみながら泉はリールを使い込む。

「僕らみたいにデイの港湾部をメインに40?50㎝がアベレージであればリールを小型化すれば釣りはより快適になる。皆、ロッドは軽いほうがいいことわかってんのに、リールのことを考えてる人は少ないですよね。軽ければ軽いほど、いいことだらけやのに……」と一生懸命、プレゼンしても効果が薄いことを少し残念がる。

 

ここで泉のリールに対する考えを深めるコメント、〝リールはスラックを巻くだけ〟に触れておきたい。「何が言いたいかっていうたら、シーバスとのファイトのときって、竿尻を体に当ててグリグリ巻いて寄せたりしないでしょ。ファイトは竿を立てて曲げてその力で寄せて、そして竿を倒すときにクリクリと巻く。そうやって少しづつシーバスを寄せてくるんですよね。だから、基本的にリールにパワーは必要ない。スラックを巻き取るだけなんですからね。そりゃパワーはあるに越したことはないけどね。グイグリ巻いて魚とケンカしている釣りをしているようではダメですからね」〝使ってる理由〟をここまで考える釣り人がどれだけいるだろうか。

ひと昔前、ナイトの大型ゲームにも没頭していた泉だが、もちろんデイも外してはいなかった。「特に〝朝まずめ〟が好きやった。釣れるからね。いまはルアーがよくなって、朝まずめを外しても時合を捉えられますけど、当時はルアーが飛ばない時代。魚の活性が高い時間帯を外せなかった」日中、細ラインでルアーを沖の深いレンジへ入れることができる時代をつくった泉。この先、彼の手元には何があるのだろうか。

 

~25年のリール遍歴~

オリムピック/ハイメカ NO.4
1980年代前半に使用(泉裕文 10歳~)「小3の頃、家に転がってた。これが最初のリール。竿は自動車のアンテナ、つまり鉄の棒。それにテープでリールをつけてストローをガイドにしてサビキ釣り(笑)」

シマノ/Z-1
1980年中頃に使用(泉裕文 13歳~)ギア比3.1の超ローギア。「シマノが釣り業界に参入して間もなかった頃のリール。これで初めてシーバスを釣りましたね」

アブ/カーディナル C4
1990年代前半に使用(泉裕文 19歳~)「本格的にシーバスを狙い始めたリール。ギア比が5.1になって一気に釣れるようになった。替えスプール付きで、そのスタイルはここから」

ペン/5500SS
1990年代前半に使用(泉裕文 21歳~)「思い出の魚をたくさん釣ったリール。いまなお大好き。リーリングサウンドがたまらない!」

ダイワ/トーナメント S3500i
1992~1993年頃に使用(泉裕文 23歳~)「当時、皆は4000番でしたが僕はこれ。大型を獲りたくて購入。巻き心地も感度も上がり、アブよりドラグはよかった」

ダイワ/トーナメント Z3000iT
1995年頃に使用(泉裕文 26歳~)「初めてダイワのハイエンドモデルに触れた。やばかった。ここからPEラインの時代が始まる。ちょうど釣りを極めようとよりいっそう全力でやり始めた頃ですね」

ダイワ/トーナメント Z3000iA(通称・ドデカコンパクト)
1996年頃に使用(泉裕文 27歳~)「PEラインのトラブルが減って感度もさらに向上。でも、海にタックルごと落として大きなショックを経験」

ダイワ/トーナメントZ3000C(通称・ドデカコンパクト/エアベール)
2000年頃まで使用(泉裕文 28~30歳)「ボディは一緒でエアベールにマイナーチェンジ。にしてもドデカコンパクトはめちゃよかったね」

シマノ/ステラAR2500
1999年頃から使用(泉裕文 29歳~)「小さくても使い心地は抜群。9フィートのロッドに合わせて、ハンドルノブを変えて使ってた。この頃からダイワとシマノのリールを併用し始めた」

シマノ/ステラ SW4000
2001年頃から使用(泉裕文 30歳~)「大きいルアーを使うナイトのパワーゲームに導入。小さいリールと使い分けていた」

シマノ/04ステラ C3000
2004年から使用(泉裕文 33歳~)「がっつりシマノリールを使い始めた頃。僕のアイデアでもあったプロテクターのデザインが搭載されたモデルでした」

シマノ/07ステラ C3000HG
2007年から使用(泉裕文 36歳~)「AR-Cスプールが搭載されて、PEラインのトラブルがほぼなくなった。これは大革命だった。ここからライトライン化がスタート。ハイギアもシーバスゲームでスタンダード化した頃ですね」

シマノ/BB-Xテクニウム Mg3000DXG
2009年から使用(泉裕文 38歳~)「レバーの導入で、ここからまた釣りが変わりはじめた。魚の動きをコントロールできるから、劇的にキャッチ率が増えた」

シマノ/エクスセンス C3000M
2010年から使用(泉裕文 39歳~)「シーバス専用機種登場。CI4素材によって軽量化・剛性化。中空パワーハンドルでより軽量。感度もより向上。黒で統一」

シマノ/エクスセンスLB C3000HGM
2012年から使用(泉裕文 41歳~)「エクスセンスにレバーを搭載。ハイパーフォースをマイナーチェンジしたもの。レバー形状をよりスタイリッシュに、そして、パワーハンドルにした」

シマノ/BB-Xハイパーフォース コンパクトモデル C2000DHG
2013年から使用(泉裕文 42歳~)「レバー部はストレートタイプのレバーに交換。同機種の1700番(スプールの違い)も愛用。軽さ扱いやすさなど総合的に、小さいことは良いことだ!シーバスゲームのフィネス化の始まりのきっかけにもなった」

シマノ/エクスセンスLB C2000MDH
2015年から使用(泉裕文 44歳~)「この時点での到達点だった。これは、ひとつの革命だった。世界初の小型レバーブレーキ付きスピニングリール。195gという圧倒的な軽量化。あえてローギア。ブレードやワームのゆっくり巻く釣りに特化したサイズ。より安定した巻きを実現するためにダブルハンドルにしました」

 

雑誌 ソルトウォーター(株式会社地球丸)2016年2月号に掲載

text & photo: Kenji Matsumoto
edit: Yashuhito Nakamura & Teru Wakabayashi

株式会社 地球丸 http://www.chikyumaru.co.jp/
株式会社 リバーウォーク http://river-walk.co.jp/

(C)CHIKYU-MARU,RIVER-WALK,Kenji Matsumoto,Makoto katsuzawa